都道府県・政令都市の30自治体で耐震化工事に遅れが発生! ~建築資材高騰・建設現場の人手不足で入札不調・不落相 次ぐ~
2025年5月号 福永慈二
2025年4月2日付・毎日新聞は「コスト急増 耐震化直撃」との記事で、次のように報じています。
『全国の都道府県や政令指定都市の半数近くで、公共施設の耐震化や老朽化対策に遅れが生じていることが、毎日新聞の自治体アンケートで分かった。2023年度から24年度上半期にかけ、30自治体で事業の見直しや先送りを迫られた。物価高騰と人手不足による予算増額と工事の遅れが原因だ。南海トラフ巨大地震などへの備えが急がれる中、災害対応の拠点ともなる公共施設の安全性への不安が浮き彫りになった。…
公共施設の事業費高騰は、勢いを増しつつある。 みずほリサーチ&テクノ ロジーズが、建設分野の物価指標として国土交通省が公表するデータを分析したところ、11~18年には年率 1・7%程度で収まっていた上昇率が、20年以降は4.3%程度に高まり、24年 1~7月には12・9%程度 へと急加速した。仮に年率13%の上昇が続 けば、50億円の計画だった 事業費が翌年に56億円に、翌々年には63億円、その次の年には72億円へと急カー ブを描いて上昇する計算になる。
原因としては、まず資材価格の値上がりが大きい。日銀の企業物価指数をもとに、同社が分析した結果、建築資材価格は21年から建設需要の増加とともに、新型コロナウイルス禍による 資源価格高騰やサプライチェーン(供給網)の混乱が加 わり、一時は前年比40%以 上もの上昇になった。その後は円安の影響もあって高止まりの状態が続いている。建設現場の人手不足も大きな課題だ …
人手不足は人件費の上昇につながる。技術者の確保が特に難しいとされる空調設備業界の関係者は「北海道や九州など人手不足が深刻な地域では、かつて日給2万円台だった仕事に6万円を提示することもある」と明かす。
24年からは働き方改革関連法に基づく時間外労働 (残業)の上限規制が建設業にも適用された。労働時間が短くなれば工期が長くなり、さらに人件費がかさむ。低賃金を前提にした見積もりや見積もり依頼を禁じる改正建設業法の施行も25年中に控える。…
公共施設の耐震化・老朽化対策が遅れれば、南海トラフ巨大地震をはじめとする大災害への備えが遅れることになる。近年の遅れは物価高騰や人件費上昇が主因だが、問題の根っこには「明治時代から続く日本の入札制度に限界がある」とみる専門家もいる。どうい うことなのか。「日本の入札制度は、世界の常識からかけ離れているのです」。こう話すのは、元国土交通省近畿地方整備局長 で、現在は一般社団法人「社会基盤マ ネジメント研究所」代表理事の木下誠 也さんだ。木下さんが問題視するのは、入札に際し、国や自治体など「官」が費用を積算して予定価格を決め、それを1円でも超えると事業者の応札が無効になる点だ。「談合による価格つり上げを防止する意図があるが、ここまで厳格な手法は世界でも例がない」と話す。…
予定価格を絶対視し、需要縮小時の「下請けたたき」につながる日本特有の制度が、デフレを長引かせ、人手不足が常態化する状況を作ってしまったのではないか。
一般社団法人全国中小建設業協会」が2023年、会員企業約2300社 を対象にした調査では、自治体の予定価格の設定に不満が噴出。都道府県発 注工事で3%、市町村発注では80%の 事業者が「適正でない」と回答した。地元の建設事業者が存続できなければ、公共施設の耐慢化・老朽化対策も進まない。入札の不調・不落続出は「官」が工事価格の決定を一手に担う構造が壊れる前兆かもしれない。【後藤豪】 』
以上の記事は、日本の主要都市においても公共施設の耐震化や老朽化対策が遅れに遅れ、深刻な事態に陥っていることを示しています。主要都市の公共施設がこの状態ですから、地方及び民間の建築物・住宅の耐震化と老朽対策の遅れは推して知るべしです。また、建設業界においては、中小建設企業の多くが大手の「下請け」となっており、「下請けたたき」にも苦しめられています。物価高騰・人手不足も深刻です。
こうした問題は、中小企業の一事業体だけでは絶対に解決できません。「官」「大手」と対抗していくためには、中小企業体はぜひとも共同協力し、力を合わせて事態に対処していくことが強く求められます。私たちも「砂地盤液化判定システム研究会」を組織し、多くの中小企業事業者との連携を深め、共同協力を追求しており、その恩恵を受け、また他社の事業活動の進展に寄与してもいます。 また、私たちは簡易井戸掘り機の開発を成功させ、地方の自治体関係者や住民団体との協力関係も更に強め、地方の地震対策の前進に寄与していくつもりです。
【お知らせ】
「天地人」欄には「科学者の言葉」を載せてきましたが、現在は「開拓者の物語」を載せています。困難な時代、激動する時
代を迎えつつある今、改めて過去の各分野で活躍した「開拓者」
の生きざまから学ぶ必要を痛感します。
『コラムー天地人』の「開拓者物語」欄に、「北海道十勝野開拓の祖・依田勉三物語」を連載しています。ぜひご一読下さい。
また、2024年1月より、幕末維新の伊豆松崎が生んだ依田勉三の師である『土屋三余先生物語』を全文掲載しています。
◎幕末維新の伊豆松崎が生んだ十勝野開拓者・依田勉三
の師 『土屋三余』
●著作者
北海道開拓史研究会(代表:福永慈二)
松崎三聖人(土屋三余・依田佐二平・依田勉三)を顕彰する会
●発行者
三余塾 土屋直彦
〒410ー3626 静岡県賀茂郡松崎町那賀73~1
(『北海道十勝野開拓の祖・依田勉三物語』上・中・下巻の
購入希望者は三余塾・土屋さんへ。各巻1500円プラス送料)
✉ gbccq165@ybb.ne.jp
《殿上義久氏(東海大学海洋学部卒・音響地質学研究所)によって発表された『液状化P波原因説』》
◆『飽和砂の剪断に伴うP波の発見とP波による液状化の発見―液状化の本質的原因とは何か?~教育おもちゃエッキーによる定性実験とその考察(1)~』
◆『液状化地域と周辺部における大地震時の音と揺れに関する面接調査~地震計ではとらえきれない物事の探求~』
《矢嶋信幸氏の『揚げ船』論文紹介》
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geo-s4@geo-stage-four.tokyo
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