2025年3月号 福永慈二
1月28日に埼玉県の八潮市で県道が陥没し、トラックが転落した事故は、2月28日で発生から1カ月がたちましたが、トラックに乗っていて転落した74歳の男性の安否は未だに不明のままです。トラック運転手の捜索が急がれる一方、復旧には長期化が見込まれ、周辺の住民や企業に不安が広がっています。
県道陥没の大きな理由のひとつが、地下10メートルに敷設されていた下水道管に穴が開き、そこから土砂が落ちて道路下に空洞ができたことに起因するとされています。だが、道路下の地盤はどうなっているのか、どこも、その調査はほとんど行われておらず、陥没が起こってはじめて慌てて対応する、ということが常態化しています。
地盤・地質調査の科学的技術と知識を総動員して、速やかに地盤調査を行い、必要な手当てを施すことが求められており、政府・自治体の責任は重大です。「国防の大義」は国民の命と財産と暮らしを守ることにあります。危険なインフラ設備問題の解決も「国防」の大きな課題であり、政府は持てる力すべてを動員してこれに対処すべきです。
その意味で、私たちが一貫して支持し、宣伝・普及に努めてきた殿上氏の「液状化P波原因説」という画期的な液状化理論が、日本の関係学会でも、公共的研究機関でも、正当に評価されず、未だに無視され、闇に葬られている現状に怒りを禁じ得ません。
東海大学海洋学部資源学科卒の殿上義久氏は、1980年代後半に『液状化P波原因説』(大地震に伴う砂地盤の液状化現象は最初の動波である縦波・P波に起因しているとの説)の着想を得、以来30有余年の長きに渡り、アルバイトをしながら、私財を投じて自前の実験室を設け、砂地盤の液状化の基礎的実験を積み重ね、また、大地震後の現地に赴き、優れた観察力でP波の実際の挙動を聞き込み、記録し、これらの知見から液状化P波原因説の理論を完成させ、発展させて来ました。(注:P波とは、地震の震源域から発生した地震波が最初に到達する縦波=Primary WaveからP波と呼び、S波とは、二番目に到達する横波=Secondary
Wave のS波のこと)。
2022年4月、殿上氏は尊敬する恩師、東海大学海洋学部の名誉教授であり、優れた海洋地質学者であった故星野通平氏の一周忌に合わせ、『液状化P波原因説』に基づく二つの論文を「星野道平教授追悼論文集」に初めて公開・発表しました。【論文は当社HPトップ画面・下段に紹介】
私たちは、この理論「液状化P波原因説」は、室内実験と地震時の野外の自然現象等の諸事実に裏打ちされた真理であり、画期的な理論であり、この理論は理学・工学などあらゆる分野に応用されうるものであると確信しています。氏の行った実験を記録した動画(15分程度のもの)は説得力に富んでおり、閲覧者に確信を与えるものとなっています。【希望者は、申し込めば、解説を付きでこの動画を閲覧することができます】
しかし、殿上理論を「星野道平教授追悼論文集」で初めて公開したにもかかわらず、残念ながら日本の土木関係者からは何の反応もなく、完全に無視されています。現在、日本の地盤・地震関係学会、国や地方公共団体も、世界の学会も、大地震に伴う砂地盤の液状化現象は地震の主振動波である横波(S波)に起因して生ずるとしており、これが常識化しています。大地震時の砂地盤の液状化の真の原因は、横波のS波ではなく、縦波のP波であるとする殿上理論はまさに旧来の理論とは180度異なる理論です。
殿上氏は、かつて「液状化P波原因説」に関連した見解を、間接的表現でしたが、日本の地盤工学系の学会誌に投稿したことがあったそうです。ところが、学会誌の編集者から、「当学会ではP波による液状化という概念は受け入れられない」と通告され、「液状化P波原因説」に関連した最も重要な箇所(5箇所)の全文削除を要求され、ようやく1999年にその部分を削除して何とか掲載許可になったそうです。
そこで、殿上氏は、当社のHP上で既に報告しているように、2020年9月、ロンドンにある「ロンドン土木工学会」の学会誌に論文を投稿しました。投稿後、ロンドンの土木学会からは、英語翻訳論文について、「英国人がよめるように」とか、「長すぎるのでもっと短く」とか、「論文を3分割に」とか、具体的修正点等、いくつかの提起があり、殿上さんはそうした課題を一つ一つクリアーしてきました。ロンドンの土木会誌の「Geotechnique 」の編集部からは、「その科学性、先進性、画期性が注目される」「早くに国際的評価がえられますように」との期待が寄せられていました。2022年春には、同誌編集部より「著者の創意工夫に敬意を表し、祝福します」との通信が寄せられ、合わせて「ニュージーランド地震のデータを調べたロンドン大学の研究者もP波によって液状化が起こっている現象を確認している」などのニュースも伝えられました。
殿上氏はロンドンの土木学会誌編集部のアドバイスを参考に、論文の再提出を行い、今年2024年春と7月に、4分割した論文の投稿を完了し、査読の判定結果を待っていました。しかし、驚くなかれ、投稿完了からわずか1ケ月後の2024年8月20日、突然、論文の掲載拒否の判定結果が伝えられてきました。これまでのロンドン土木工学会誌編集部の好意的な対応から見て、これから本格的な査読が始まるというこの段階での、このような「掲載拒否」判定は、到底認められるものではありません。殿上氏は「全体の情勢からみるとかなりネガティブ」であり、「ロンドンの土木学会と日本の土木関係機関・関係者との結びつきが強く、ロンドンと東京がつながっている可能性がある」と推測していますが、我々の目から見ても、どこかからか横槍が入ったとしか考えられません。そう言わざるを得ないような酷い結果状況です。
現在、殿上氏は日本国内の地質研究機関への投稿を試みていますが、私たちも独自に賛同者を組織し、独自ルートで殿上理論を世に出していく運動を進めています。
先に述べた通り、八潮市の陥没事故は日本の土木事業、建設業、地盤調査業に大きな問題を投げかけています。関係ある日本の地質・地盤業者は、力を合わせ、あらゆる力を結集し、総力を挙げて「国防の大義」(国を守るとは国民の命と財産と暮らしを守ることである)を実現させていきましょう!
【お知らせ】
「天地人」欄には「科学者の言葉」を載せてきましたが、現在は「開拓者の物語」を載せています。困難な時代、激動する時
代を迎えつつある今、改めて過去の各分野で活躍した「開拓者」
の生きざまから学ぶ必要を痛感します。
『コラムー天地人』の「開拓者物語」欄に、「北海道十勝野開拓の祖・依田勉三物語」を連載しています。ぜひご一読下さい。
また、2024年1月より、幕末維新の伊豆松崎が生んだ依田勉三の師である『土屋三余先生物語』を全文掲載しています。
◎幕末維新の伊豆松崎が生んだ十勝野開拓者・依田勉三
の師 『土屋三余』
●著作者
北海道開拓史研究会(代表:福永慈二)
松崎三聖人(土屋三余・依田佐二平・依田勉三)を顕彰する会
●発行者
三余塾 土屋直彦
〒410ー3626 静岡県賀茂郡松崎町那賀73~1
(『北海道十勝野開拓の祖・依田勉三物語』上・中・下巻の
購入希望者は三余塾・土屋さんへ。各巻1500円プラス送料)
✉ gbccq165@ybb.ne.jp
《殿上義久氏(東海大学海洋学部卒・音響地質学研究所)によって発表された『液状化P波原因説』》
◆『飽和砂の剪断に伴うP波の発見とP波による液状化の発見―液状化の本質的原因とは何か?~教育おもちゃエッキーによる定性実験とその考察(1)~』
◆『液状化地域と周辺部における大地震時の音と揺れに関する面接調査~地震計ではとらえきれない物事の探求~』
《矢嶋信幸氏の『揚げ船』論文紹介》
質問のある方は下記へメールを。
geo-s4@geo-stage-four.tokyo
〈地質関連会社〉ジオ・フロント
◎毎月1日更新
◎トップページ:『第四紀=人類紀』
情報 ページ:『天と地と人とー科学者の言葉・開拓者物語』